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今朝のエピソード。 [ナースの宝箱]

「お、誰か鳴らしてるな。よしワシも・・・」
夜中にナースコールを負けじと鳴らしあっているおじいちゃんとおばあちゃんの競演が朝方やっと終了し、鬼のように多い本日の採血をなんとか回っているころ、トイレと反対方向に向かっている歩行器で歩く後ろ姿を発見。

その後姿は、入院してきたときはぐったりで発語もなかったおじいちゃん。
ある日突然目覚め、「帰ってきました。」の一言に「**さんが目覚めた!!」「**さんがしゃべった!!」と喜び、みんな笑顔がこぼれた。

それ以来、フラフラしながらも動くため、ナースステーションに近いお部屋で見守り中。
就寝前からトイレに行こうとフラフラ出てくるので、歩行器を教えたら大層気に入り、呼んでから見守りで歩きましょうという約束に「頼みます」と言っていたのに、コールが鳴ることはなく、出掛けをキャッチして見守り、の繰り返し。

でも、失禁してしまうよりも排泄行動の自立に向けた援助は大切なこと。
「みんな心配してくれたのか~。いや~悪いな~。ありがたいな~。」
夜中も何度も見かけてスタッフで入れ替わりトイレ誘導しているが、ナースステーション前のツリーの電飾の目印も意味なく、毎回反対に向けて歩いてしまうので、そのたび一緒にトイレとお部屋の間の見守り。

送り届けて無事、転倒することなく朝が来たな~と思っていた矢先。

「なんか私今日変だわ。おかしくなっちゃった。
ね~看護婦さん、私ぼけちゃったのかも。なんか変なの。どうしよう・・・」

朝5時半過ぎ。フラフラと廊下に出てきたおばあちゃんを発見。
表情もうつろで、声をかけると上記のように繰り返していた。

声をかけると手を握ってくるため、支えると「部屋に戻る。一緒にきてくれる?」と。
体を支えながら一緒に歩き、部屋に戻ったあと、不安になると表情が乏しくなって、認知症の症状が出てしまう方だが、念のため検温するが異常はなし。

その後もベッド回りでガサゴソと荷物を開けたり閉まったり。
朝の採血や薬配りなどをしながら気をつけていると、おばあちゃんはトイレへ。
誘導して帰りはブザーで知らせるよう伝えていたが、いつのまにかナースステーションの
カウンターにきて、私を手招き。

「報告に来たよ。私変なの治った。あのね、見せたいくらいね、たっくさん出たの。そしたらね、治ったよ。あ~もうだめかなって思ったのに、トイレ終わったら治ったよ。心配かけたね。」
すっきりした笑顔で嬉しそうに何度も何度も部屋に一緒に戻るまで、排便があったことを切々と訴える。

部屋に一緒に戻り、何はともあれ良かった。

経管栄養を入れるため、入ったおじいちゃんのお部屋では、寂しがりの小さなおじいちゃんが、私の手をたぐりよせ、一生懸命抱きつこうとしている。個室のため余計寂しくなっている様子。
そこに後輩スタッフ登場。
「おはようございます。」と声をかけられ、そっちにも手を差し伸べる欲張りおじいちゃん。しばらく二人の手を離そうとしない。
これも、いつものこと。
「**さん、また来るから、お仕事行って来てもいいですか?」
しぶしぶ手を握る力を弱めてうなづいてバイバイと手を振ってくれる。

ナースステーションに戻ると、別のおばあちゃんが部屋の入り口からこちらを眺めている。転倒のリスクの高いおばあちゃんで、夜中に点滴を自分で抜いてしまった方。

「おはよう、ここはどこだったかねぇ~ハイヤーを呼んでくれんかねぇ。家帰りたいだ。迎えが来んもんで。」

「ここは**病院でねぇ、○○さんは入院してるんですよ。しっかり治したらハイヤー呼んで、お家に帰れるもんで、まずは朝ごはんしっかり食べましょうか。」

「ほぉ~っか。病院か~。じゃあ、まんだ家には帰れんのか・・・ほぉ~っか。
ここで(朝ごはん)呼ばれるのか。んじゃま、いただくか。」

食後もハイヤー(タクシー)を呼んで欲しいと言っていたおばあちゃん。
でも、ニコニコ笑顔で言われると思わずニコニコ。

疲れたけど、いっぱい癒された今朝の場面の数々。
また明日はゆっくり休んで、あさってから頑張ろう。


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コメント 8

kyao

毎日のお仕事、本当にお疲れ様です。
汚い話で恐縮ですが、いちばん大切なのは、やはり食事と「下の世話」なんですよね。私の実家の父も数年前からおむつをするようになりましたが、それだけで済むような問題ではなく、本人の気持ちとか周りの世話をする人間の手間や気持ちとか…帰省する度に複雑な思いをさせられます。
そんなことを一手に引き受けてらっしゃる看護師のみなさん。本当に頭が下がります。奉仕の気持ちがなかったら、絶対に続かないのでしょうね。
どうかどうか、それでご自分のお身体や気持ちを壊してしまうようなことがないように。ひなさん、ご自愛くださいね。(^^)
by kyao (2006-12-12 08:41) 

ひな

>kyaoさん
トイレに行けない方は、限られた空間の中で食と排泄と相反するものが同じ場所で行われるのですから、そこを十分考えてケアしていかなければ傷つけたり嫌な思いをさせてしまうことになります。
私たちはお仕事ですが、在宅で介護をされている方には本当に頭がさがります。なので、入院中にはご家族の方にも声をかけていき、労をねぎらう様にしています。奉仕・・・というか、なんというか、ただ好きなんだと自分では思ってます。
by ひな (2006-12-12 18:05) 

ひな

>アキオさん
niceありがとです。足跡みたいですね。読んでくださったのがわかるので。
by ひな (2006-12-12 18:06) 

sumeru

ひなさん、こんばんは。(^^
お仕事とはいえ、本当にお疲れ様です。
非常に身につまされるお話・・・。
今のところ、認知症の症状が進んではいない、うちの母ですが、、、。(汗
このまま進行が止まってくれればいいな~と、ただただ祈るだけ。。。
しかし、私自身もいずれ・・・なんて、考えると、、、。
キーボード、毎日弄っていれば大丈夫かな・・?(^^;
by sumeru (2006-12-13 18:04) 

ひな

> to さん
こんばんは(^。^)
何より刺激が一番大切です。声をかけること、触れ合うこと。
無表情で反応に乏しい患者様に毎日話しかけること。
そしてその反応をご家族の方に伝えて、一緒に共有すること。
心がけていることの一つです。
話しかけ続けてもダメなこともあるけれど、根気よく。
それも私たちの大切な役割の一つだと思ってます。
by ひな (2006-12-15 07:51) 

りんたろ

ひなさん、お久しぶりです。復活してくださってうれしいです。ひなさんのブログを読ませていただくと、忘れていた大切なものを取り戻せるような気持ちになれます。また暖かい記事を読めること、楽しみにしています。
by りんたろ (2006-12-19 22:32) 

sumeru

☆~Merry Christmas!~☆
素敵なeveの夜になりますように。(^^
by sumeru (2006-12-24 18:37) 

ひな

>りんたろさん
返事が遅くなりました(>_<)こちらこそ、また来てくださって嬉しいです。
のんびりやりますのでよろしく。
>toさん
クリスマスイブは夜勤でした~(T_T)
って、年越ししてもう15夜を越してから書く言葉じゃないですよね(-_-;)
すみません。今年もよろしくなのです。
by ひな (2007-01-16 09:45) 

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