おじぎをする癒しの手 [ナースの宝箱]
連日勤務で帰宅が毎日10時半をまわっていたあとの夜勤の巡回時のできごと。
ぱっちり目を開けているおばあちゃんに変わりないか声をかけると、手のひらをおじぎさせるようにして「ありがとう」のいつもの合図。
自分では起き上がれず寝たままのおばあちゃんにとって、頭を下げる代わりに寝たままで出来るお礼のしぐさのようで、大分前からこのしぐさをするようになった。あまり発語の多い方ではなく、声をかけても手のしぐさばかりの時もあるし、時々急に話す時にはつじつまの合わないことを言っていることも多い。
先日も夜中の巡回時、「うちのもんがおらんくなっちゃったで弱ったなぁ~(家族が居なくなってしまったから、どうしよう、困ったなぁ)」と突然話しだしたと思ったら「道に迷って帰れんくなっちゃった。誰か連れて来てくれんかなぁ。わし一人じゃ動けんもんで。(道に迷って帰れなくなってしまった。家族を誰か連れてきてもらえないかなぁ。私一人じゃ動けないから。)」と突然話し出しされたことがあった。
「大丈夫。私がお家の人に頼まれてるから心配いらないですよ。」と声をかけたら、おばあちゃんは頷きながら「わし一人じゃ動けんもんね。頼む~。」と言ったあと、安心したのか、表情は穏やかになったが、また言葉がでなくなってしまい最後は手のおじぎをしてくれ退室した。
今回の夜勤では、そのおばあちゃんが急ににっこりしたと思ったら「よう頑張ったな~。かわいいな~。」と何度も繰り返しながら、キラキラした目でニコニコしながら、私の頬や頭をよしよしするように撫でてきた。しばらくそうしたあと、満足したように頷き、また手のひらでぺこりとおじぎをして布団に手をしまった。
おばあちゃんは私を他の誰かと思っているのだと思うけど、疲れていた私には突然の癒しのプレゼント。
「私は**さんの笑顔に元気もらってるよ。ありがとう。」と言うと、おばあちゃんが、手でぺこり。
さあ、また頑張ろう。
体が自由に動かせなくても、心はどこまでも自由。関わる人の心を動かす力はどれほど歳をとっても変わらないものなのでしょうね。
手のひらのおじぎ。おばあちゃんの心。感じ入りました。
by 参明学士/PlaAri (2007-01-16 12:20)
どなたに対してのことであるかは分からないけど、そのお婆様、心の中でその方のことを一生懸命心配されているのでしょうね。(^^)
もしかしたら、お婆様のその優しさといたわりの心を、ひなさんが伝えてくださると信じてのことなのかも知れません。(^^)
普段は分からないだけで、私たちの身の回りには、誰かに向けられたどなたかからの優しい気持ちで溢れているのかも知れませんね。(^^)
by kyao (2007-01-16 13:32)
>参明学士 さん
本当に言葉がでるときとしぐさばかりで今日は声が聞けないという日と、すごい差があります。
家族が見舞いに来ている時にお話ができていることが少ないので、お会いしたときには、こんなことを話していましたよ、とできるだけ伝えるようにしています。
手のひらのおじぎはオムツ交換の後にも必ず見られます。
いくつになっても感謝の気持ちを忘れない、そんな素敵な方です。
>kyaoさん
きついのにこの仕事がやめられないのは、こういった数々の場面が愛おしいからかもしれません。もう一人別のおばあちゃんでも必ず「すみません、ありがとう」っていうおばあちゃんがいて、見習いたいと思っています。
by ひな (2007-01-16 17:50)
ひなさん こんばんは
ひなさんとその患者さんのやり取りがはっきり思い浮かべることが出来ますよ!
患者さんって見ててくれてる方は本当によく見てくれてるんですよね。
私自身介護をしていて、
『このおばあちゃん よくスタッフをみてるなぁ!』って思うことよくあります。
その おばあちゃん、ひなさんが連続で頑張ってる姿をみて、
『よぉ頑張ったなぁ~・・・・』って言ってくれたんだと思いますよ!
by (2007-01-17 00:09)
>おきちゃん さん
今日もこのおばあちゃんとお話してきましたが、お家の誰かのこと心配なのかきいたら「別に心配しとらん」と答え、撫でたことは覚えていないということでした。今日もお話できる日で調子聞くと「いいよ」と答えていました。
文章だと独特のあのゆったりとした間だったり訛りだったりが伝わりづらく、もどかしい気がします。生の話し方ってほんとに癒されますよね。
by ひな (2007-01-17 22:00)